マンション、買ってますか?
私は購入したことがありません。完全賃貸派です。
私は数年前まで金融機関で任意売却の仕事を10年ほどしていました。
任意売却とは簡単に言うと「住宅ローンを払えなくなった人が家を売り、借金返済に充てる」ということです。
住宅ローン(滞納があれば税金や管理費)が完済すればいいですが、そうじゃない場合が多かったです。
家は古くなるし、ローン滞納する人の家は残置物も多く、ゴミ屋敷になっていることも少なくありません。
そのような状況下で債権者として最大限(と言っても本当に限度がある)債権回収をしていました。
そんな私が読んだ「すべてのマンションは廃墟になる(著:榊淳史)」
の本をもとに、私の経験を踏まえて、物件所有のリスクと責任、解決方法についてお話します。
マンション購入のリスクが多すぎる
私はマンションの価格はこうやって決まる、ということは上記の経験からなんとなく知っていました。
しかし、実際購入したことが無く購入リスクは「物件が古くなって売れなくなるくらいでしょ?」
と単純に考えていました。
とにかくそんなもんじゃなくリスクが多すぎます。
分類すると5つほど
- カンタンに管理組合(理事、理事長)が腐敗する仕組み
- 管理組合が腐敗したマンションは、最終的に廃墟
- 資産どころか手放すのにお金がかかる
- 強すぎる個人財産の権利
- 日本には相続財産の分離放棄がない
すべて目を覆いたくなる現実です。
腐敗しやすいザルな法律「区分所有法」
- 管理組合理事長が約7億円の修繕積立金を着服
- 区分所有者が賃貸したくても理事長が認めない(拒否する)
- 理事長が管理組合の預金通帳を開示しない
- リフォームは組合指定業者しか使えない(理事長とつながってる?)
- 理事長が何故か働かず、住宅ローンを返済し、暮らしを維持している
これらは実際にあったことで、「よくあること」なのです。
なぜこんなことがまかり通っているかというと、「区分所有法」が性善説に基づいて作られているから。
グレーゾーンが多く、権力が一極集中しやすいのです。
「理事なんてめんどくさいからだれかやってくれないかな」
なんて思っているとこんなことになりかねないのです。
マンションの区分所有者は一蓮托生。1つの街(公共のもの)だと言っても過言ではありません。
街をよくするのは政治(理事会)。
他人事だと思わず、所有の責任を果たさないとマンション価値は下落の一方です。
マンション管理の決定権は区分所有者にありますから、自らで健全な組合にする必要があるのです。
機能不全となった管理組合のマンションは、争いごとがたえませんから必ず廃墟化します。
粗大ゴミ化する老朽マンション
任意売却の仕事をしていたころ、全く売れずに競売でも落札されない物件を見てきました。
ローンが無かったとしても、ランニングコストばかりがかかる、住みもしないマンションなんて早く手放したい。
そんな所有者の弱みに付け込んだ商売があるというから驚きです。
「三年分の経費(管理費・修繕積立金と固定資産税など)を支払えば所有権を移せる」
というもの。
1か月の管理費・修繕積立金が15,000円(かなり安い)だったとして、それだけで54万円です。
市場の価値が無い物件であれば、手放したい所有者は支払います。
お金を払ってマンションという名のゴミを回収してもらうのです。
そしてその支払った先の会社は自分の子会社に所有権を移ます。
そのあと子会社は「管理費・修繕積立金」「固定資産税」を国や組合に支払わないんです!
なんだか狸に化かされたみたいなハナシですね。
税金滞納された方と管理組合が気の毒でなりません。
その会社としては「いや~運用がうまくいかなくて!(てへぺろ)」と言うらしいです。真実は闇の中。
強すぎる日本の個人の財産権
日本より中国がインフラが整いやすいのはご存知でしょうか。
なぜなら交渉が不要だから。
中国が新幹線を通したかったら「どいて~ここ使うから!」で済んじゃうのです。
行くとこが無くても退かざるを得ません。
このやり方がいいかどうかは別として、日本ではそうはいきません。
私有地を譲ってもらう交渉が個人個人に行われるので、中国より気の遠くなる時間が必要なのです。
民主主義の先進国の中でも日本のマンションの区分所有権がめちゃくちゃ強い。
フランスでは問題のある集合住宅に対する国への対応は日本より強いとのことです。
老朽マンションが相続財産となったら?
相続する財産に対して相続する人がする対応方法は3つあります
- 単純相続→財産を全部相続
- 相続放棄→財産を全部相続放棄
- 限定承認→負債を清算して相続する
そこで、住む予定のない市場価値が無いマンション(住宅ローンは完済)と現金1000万円をあなたは相続することになりました。
どの対応方法を取りますか?
市場価値が無くても負債ではないので、相続すればランニングコストはあなたにかかることになります。
実はこのようなケースは、これから頻発するだろうと言われています。
高齢社会のためです。
単純相続(もしくは限定承認)→マンションのランニングコストの滞納→競売→多額の費用
相続したあなたが会社員や公務員であれば給与差し押さえとなる可能性だってあります。
そこで著者は、区分所有物件に関しては分離放棄を認める改善をした方が良いのでは、としています。
放棄されたものを管理組合が取得し、活用できればいいのにとつづられていました。
私個人としては国のものになったほうが活用の幅が広がりそうだと感じたが、とても希望の持てる案ですね。
まとめ
- マンションの管理組合が腐敗しやすい環境→他人任せにしない
- マンションは粗大ゴミ化する可能性がある→そのリスクを享受した上で購入。付け込まれる!
- 個人の財産権が強すぎる日本→もう少し国が介入できるようにするべき
- 老朽マンションの相続→トラブルを避けるために分離放棄ができるようにするべき
この本を読んで、家を持つって責任重すぎない…?と怖くなりました。
管理組合は普通にマンション買った人たちで成り立っています。
そんな運営とか素人にできるのか?
そこを搾取しようとコンサルタントや管理会社が狙ってくる可能性だってある。
結局、購入後も勉強を続けて、あらゆるリスクに備えられる人が大きな買い物をするのに向いていることになります。
悲しく厳しいけれど、気が引き締まる結果となりました。
ただ楽をしたいがために何も考えず購入するものではありません。
勉強はし続けよう!
コメント
いいこと書かれますね〜。まあ区分所有者は今は考えたくないことでしょうが。
本質的には老朽化すると欲しがる人が減るのでコストのみがのし掛かる。
理事会自体がマンションオーナーのリスクになりかねない。
いいコラムだと思いました。
コメントありがとうございます。
理事会云々の話は考えたこともなかったのでかなり勉強になりました。
そのあたりを理解して購入している人がどれくらいいるのか?
と考えると恐ろしいですね。